第35回 その木は言った。
2002年 09月 11日
その木は言った。
「もう私は何も持っていないのよ。
あなたにあげられるリンゴの実も、
家を造れる枝も船を造れる幹も。
あなたにあげることが出来るものは、
もう何ひとつも持っていないの。
ただ私に出来ることがあるとしたら、
古ぼけた切り株の私に
何か出来ることがあるとしたら。
それは、あなたのつかの間のイスになることだけ。
さあ、座りなさい。
もしもあなたが疲れてどうしようもないのなら。
行くあてもなく、待つ人もなく。
ひとりぼっちで疲れてどうしようもないのなら。
私に座りなさい。
そうすれば、私はとても幸せだから」
古ぼけた切り株に
年老いた少年はゆっくりと腰掛けて、やがて死んだ。
それでも、木は幸せだった。
「もう私は何も持っていないのよ。
あなたにあげられるリンゴの実も、
家を造れる枝も船を造れる幹も。
あなたにあげることが出来るものは、
もう何ひとつも持っていないの。
ただ私に出来ることがあるとしたら、
古ぼけた切り株の私に
何か出来ることがあるとしたら。
それは、あなたのつかの間のイスになることだけ。
さあ、座りなさい。
もしもあなたが疲れてどうしようもないのなら。
行くあてもなく、待つ人もなく。
ひとりぼっちで疲れてどうしようもないのなら。
私に座りなさい。
そうすれば、私はとても幸せだから」
古ぼけた切り株に
年老いた少年はゆっくりと腰掛けて、やがて死んだ。
それでも、木は幸せだった。
by aoyagi375
| 2002-09-11 10:48
| ★あなりすの2乗(詩)